International Collaborative Human Resources Development Program in Asia to Foster Inclusive Mindsインクルーシブ・マインドを醸成するアジア地域国際協働人材育成
2021年度大学の世界展開力強化事業(B①:CAプラス)

2025年度のインドネシア教育大学・カセサート大学への17名の短期派遣が無事終了しました!

令和7年度(2025年度)東南アジア短期派遣 実施報告書

実施概要

 

期間:令和8年2月14日(土)~2月28日(土)【14日間】
参加者:学生17名、引率教職員3名

インドネシア

日程:2月15日(日)~2月21日(土)
場所:インドネシア教育大学(バンドン)
テーマ:宗教の多様性

タイ

日程:2月21日(土)~2月28日(土)
場所:カセサート大学サコンナコーンキャンパス(サコンナコーン県)、カセサート大学バンケンキャンパス(バンコク)
テーマ:宗教・民族・マイノリティ


インドネシアで学ぶ多文化・多宗教社会

広島大学17名、北京師範大学4名の計21名が参加し、インドネシア教育大学からも9名の学生スタッフがサポーターとして参加しました。プログラムは全行程を英語で実施し、日本・中国・インドネシアの学生がともに学び、講義やディスカッション、グループワーク、フィールドワークを通して交流しました。

インドネシアのバンドンを中心にさまざまな地域を実際に訪問し、それぞれの歴史や文化、宗教、人々の暮らしに触れることで、多様な宗教・文化が共存する社会について考える機会となりました。異なる文化的背景を持つ学生同士が英語で意見を交わす中で、さまざまな価値観や考え方に触れ、多様性を尊重し、互いの違いを理解することの大切さを学びました。

また、インドネシア教育大学の学生スタッフが各活動をサポートし、現地の学生との交流を通して、教室での学習だけでは得られない現地ならではの視点や気づきを得ることができました。

講義・ディスカッション

講義では、インドネシアの文化・宗教・民族の多様性やインクルージョンについて学びました。質問やディスカッション、ゲーム、グループワークなどの参加型の活動を取り入れ、学生同士で意見を交わしながら理解を深めました。

・講義①宗教の歴史
宗教の記録や体系化と文字の発明との関係について学んだほか、インドネシア・中国・日本の学生による混合グループで、自国における宗教の在り方について議論しました。宗教と文化的伝統との関わりなど、国による違いや共通点について意見を交わしました。

・講義②多文化・多宗教社会の文化と歴史の背景
マラッカ海峡を通じた交易などを背景に、ヒンドゥー教・仏教・イスラム教などが伝わり、多様な文化が形成されてきたインドネシアの歴史を学びました。ゲーム形式のディスカッションでは、異なる意見を尊重することや、寛容性の大切さについて考えました。

・講義③多宗教社会に関する視点と考察
イスラム教、ヒンドゥー教、キリスト教、仏教、スンダ・ウィウィタンなど、インドネシアにおける多様な宗教とその歴史について学びました。グループワークでは、宗教・文化の多様性が社会生活に与える影響などについて意見を交換。最後には、「多宗教社会における統一」をテーマにビジョンボードを作成し、グループごとに発表しました。

多様な宗教・文化を現地で体験

講義で学んだ宗教や文化について、実際に寺院や学校、地域を訪れ、見学や体験を通して理解を深めました。さまざまな宗教や伝統文化に触れ、インドネシアの多様性を身近に感じる機会となりました。

・ Vihara Vipassana Graha(仏教寺院)
寺院の僧侶から仏教の歴史や教えについて丁寧に説明を受けました。その後、インドネシア教育大学の学生スタッフの案内で、寺院内の仏像や建物を見学しました。また、寺院の方から祈りの作法を教わり、実際に体験することで、インドネシアの仏教文化への理解を深めました。

・アンクルン・ウジョーの体験・伝統芸能の鑑賞
インドネシアの伝統楽器「アンクルン」について学び、参加者全員で演奏を体験しました。アンクルンは竹で作られており、竹の筒の厚みによって音階が異なることを学びました。参加者一人ひとりが1音を担当し、音の出し方を教わりながら全員で演奏しました。伝統芸能の鑑賞では、演奏や踊りにも参加し、楽しみながらインドネシアの伝統文化に触れました。

・スンダ・ウィウィタンを信仰するKampung Cireundeu(カンプン・チルンドゥ)を訪問
祖先から受け継がれてきた信仰や生活文化について学びました。スンダ・ウィウィタンは、仏教やイスラム教などの外来宗教が広まる以前から続くスンダ人の伝統的な信仰で、現代社会と関わりながらも、祖先の価値観や生活様式が大切に受け継がれています。現地の方から、信仰や文化を守りながら暮らす地域の人々の生活について話を伺いました。また、「大地(母)と直接つながる」という考えのもと、神聖な場所を裸足で歩くハイキングを体験しました。昼食ではこの地域の主食であるキャッサバを味わい、その後、キャッサバの加工体験も行うなど、地域に受け継がれてきた文化や生活を実際に体験しました。

・ Pura Agung Wira Loka Natha(バンドン最古のヒンドゥー教寺院)
インドネシアにおけるヒンドゥー教の歴史や文化的な役割について学びました。ヒンドゥー教がインドネシアの社会や文化に与えてきた影響や、「多様性の中の統一」という理念のもとで受け継がれている文化について理解を深めました。また、伝統楽器「ガムラン」の演奏を体験しました。演奏者から指導を受けながら学生同士で音を合わせ、初めての演奏ながら一体感を感じながら楽しみました。

・ Bosscha Observatory(ボスカ天文台)
普段を一般公開はしておらず、研究用として利用されているボスカ天文台へ訪問しました。大型望遠鏡や天文台の歴史について学び、銀河や惑星の写真などを見学しました。学生からも積極的に質問が出るなど、興味深く学ぶ機会となりました。

・ Al-Irsyad Satya Islamic School(イスラム教の学校)
学校の教育方針やラマダン期間中の取り組みについて学び、現地の中高生と交流しました。学校生活や文化、宗教について意見を交わし、イスラム文化への理解を深めました。

・イマーンヌーン天文台・プラネタリウム(ムショラ:礼拝堂を兼ねたプラネタリウム)
ムショラと呼ばれる礼拝堂を兼ねたプラネタリウムを訪問し、宇宙や天文学の基礎について学びました。バンドンの昼と夜の空や星座について学ぶとともに、太陽や月の動きがイスラム教の礼拝時刻や暦とどのように関わっているのかについても理解を深めました。天文学を通してイスラム文化に触れる貴重な機会となりました。

・ Al Jabbar Mosque(アルジャッバーモスク)
礼拝やモスクの建築、イスラム文化について学び、イスラム教博物館の見学やアラビア文字のカリグラフィーを体験しました。この日のプログラムはすべてモスク内で行われ、女性参加者にとっては、ほぼ一日を通してヒジャブを着用する貴重な経験となりました。また、モスクでは男女で入口が分かれていることや、金曜日の礼拝では大広間で礼拝するのが男性に限られている様子を見学し、イスラム教における礼拝の習慣や男女の空間の違いについても理解を深めました。最後の感想発表では、代表の学生が自信を持って英語で発表する姿が見られ、プログラムを通した成長もうかがえました。


タイで学ぶ多文化・多民族社会と社会課題

広島大学17名、北京師範大学3名、韓国外国語大学2名の計22名が参加し、カセサート大学からも約20名の学生スタッフがサポーターとして参加しました。プログラムは全行程を英語で実施し、日本・中国・韓国・タイの4か国の学生が、オリエンテーションから講義、グループワーク、フィールドワークまで一緒に活動しました。

自己紹介では、好きな食べ物やタイでやってみたいことを紹介するなど、互いの文化や関心を知ることから交流をスタートしました。その後、講義やグループワーク、フィールドワークを通して、タイの文化・歴史・宗教・民族的多様性について学び、異なる文化的背景を持つ学生同士が意見を交わしながら、さまざまな価値観や考え方に触れました。

タイ東北部の多民族文化を学ぶ―サコンナコーン

タイ東北部のイサーン地方に位置するサコンナコーンを訪れ、地域の歴史や文化、自然環境について学びました。プーパン山脈に囲まれたサコンナコーンは、約3,000年の歴史を持ち、米やゴム、畜産などの農業が盛んな地域です。藍染め布や牛肉などの特産品でも知られ、タイ第2の淡水湖であるノーンハーン湖は、地域の重要な湿地となっています。
ラオスやベトナムとの歴史的な交流を背景に形成された多民族文化や、伝統衣装、祭り、自然に対する信仰などについて、講義やフィールドワークを通して理解を深めました。また、地域に受け継がれてきた伝統文化や、自然と共生しながら発展してきた地域の暮らしについても学びました。

・サコンナコーンの文化・宗教・民族についての講義
開校式の後、サコンナコーンの歴史や文化、宗教、民族についての講義を受けました。地域の多民族文化がどのように形成されてきたのかを学び、現地でのフィールドワークに向けて理解を深めました。

・ロータス博物館・庭園
大学の施設の一つであるロータス(蓮)園を訪問し、多様な蓮やスイレンの収集・研究について学びました。昼咲き・夜咲きなどさまざまな品種や、タイ原産種・交配種の特徴について説明を受け、蓮の多様な美しさに触れました。また、仏教行事の装飾に用いられる蓮をかたどったろう細工作りも体験しました。

・Wat Phra That Choeng Chum Worawihan(寺院)(ワット・プラタート・チューンチュム・ウォラウィハーン)
歴史ある寺院を訪れ、寺院の歴史やタイの仏教文化について学びました。現地の人々が行う参拝の作法について説明を受け、金盞花と線香を手に寺院の周囲を3周して祈った後、線香に火を灯して再び祈り、最後に線香と金盞花を所定の場所に供える一連の参拝を体験しました。実際の祈りの作法を体験することで、現地の人々の信仰や寺院が地域社会で果たす役割に触れ、タイの宗教文化への理解を深めました。

・Phu Pham Development Study Center(地域開発施設)
1982年に設立された王立開発研究センターを訪れ、水・森林・土壌などの課題解決に向けた地域開発の取り組みについて学びました。同センターでは、複数の政府機関が連携し、研究・研修・普及活動を通して、地域の自然環境や人々の暮らしの向上に取り組んでいます。ソムタム作りやハーブの体験、施設内の見学を通して、地域に根ざした持続可能な取り組みについて理解を深めました。

・藍染め体験
サコンナコーンに受け継がれてきた天然藍を使った伝統的な藍染めについて学び、綿布の染色を体験しました。染料は完成までに約3か月を要し、色落ちしにくいことが特徴です。布を折ったり、縛ったり、巻いたりすることで白い部分を残し、自由に模様を作る方法を体験しました。学生たちはそれぞれ工夫を凝らしながら染色を楽しみ、地域の自然や文化と結びついた伝統技術に触れる機会となりました。

・エレファントパーク
象への餌やりやパフォーマンスの見学などを通して、タイの象文化に触れました。実際に象と触れ合う体験を通して楽しみました。

・St. Michael’s Church(教会)
牧師から教会の歴史や地域におけるキリスト教について話を聞いた後、教会の地下にある博物館を訪れました。1884年に約20~30家族のカトリック信者が移住し、教会を設立したことや、宣教師の支えを受けながら発展してきた歴史について学びました。また、カトリックが少数派であるタイにおいて、他の宗教と協力しながら共存していることを学びました。

・Phuphan Museum(博物館)
サコンナコーンの歴史や文化、自然環境、農業などについて学びました。地域の歴史や人々の暮らしについて知ることで、現在まで受け継がれてきた文化への理解を深めました。

多様な文化・宗教の共存と社会課題を考える―バンコク

バンコクでは、クディチン地区を訪問し、異なる文化や宗教が共存してきた歴史について学びました。チャオプラヤー川沿いに位置する歴史ある地域で、ポルトガル系タイ人の文化をはじめ、仏教・キリスト教・イスラム教、タイ・中国文化などが共存しています。寺院や教会、博物館などを巡り、多様な文化が共存する地域の特色に触れました。

また、Equitable Education Fund(EEF)による講義では、貧困や地理的条件などによる教育格差と、その解消に向けた取り組みについて学びました。さらに、伝統衣装を身に着けてWat Arun(ワット・アルン)を見学し、カセサート大学バンケーンキャンパスの博物館を訪問するなど、タイの歴史や伝統文化についても学びました。

・Equitable Education Fund(EEF)による講義
教育機会の格差解消に取り組むEquitable Education Fund(EEF)について学びました。貧困や地理的条件による教育格差への支援や、奨学金、研究・政策開発などの取り組みを知り、教育を通じた社会課題へのアプローチについて考えました。

・クディチン地区
チャオプラヤー川沿いの歴史あるクディチン地区を訪れ、ポルトガル系タイ人や中国系住民の文化、仏教・キリスト教など、さまざまな文化や宗教が共存してきた地域の歴史について学びました。ワット・カラヤナミットや、福建系中国人が建立したキアン・ウン・ケン廟、1770年建立のサンタ・クルス教会を巡り、それぞれの文化や信仰に触れました。バーン・クディーチン博物館では、ラーマ3世時代の多文化交流の歴史や地域に関わった人物について学び、屋上からクディチン地区とチャオプラヤー川を一望しました。寺院や教会、博物館を巡る中で、多様な文化が共存してきた地域の特色に触れました。

・Siam Square
バンコクの繁華街であるSiam Squareを訪れ、学生スタッフとともに自由時間を過ごし、現地の学生との交流を深めました。

・Wat Arun(ワット・アルン)
タイを代表する寺院の一つを訪問し、寺院の歴史や伝統文化について学びました。伝統衣装を身に着けて見学することで、タイの文化をより身近に体験しました。

・カセサート大学バンケーンキャンパス博物館
カセサート大学の歴史やタイの文化について学びました。大学の歴史と地域の文化に触れ、タイの教育や文化について理解を深める機会となりました。

多様な視点を生かしたファイナルプレゼンテーション

プログラムの最後には、日本・中国・韓国・タイの学生による混合グループで、Diversity & Inclusion(多様性と包摂)をテーマにプレゼンテーションを行いました。

同じテーマでも、文化的背景によって着眼点や考え方が異なることを知り、互いの違いを尊重しながら一つの成果を作り上げる貴重な機会となりました。多国籍の学生との協働を通して、多様な価値観を理解し、異なる背景を持つ人々と協力する力を身につけることにつながりました。


プログラムを通して得られた成果

今回のプログラムでは、講義やフィールドワークを通じて、学生が多様な文化・宗教・民族が共存する社会を実際に体験し、Diversity & Inclusion(多様性と包摂)について考える機会を得ました。

本プログラムへの参加にあたっては、事前学習としてCOIL型教育・e-STARTを必修とし、オンラインでDiversity & Inclusionの基礎を学びました。その上で、渡航型プログラムでは、実際に現地を訪れ、さまざまな文化や宗教、人々の暮らしに触れることで、オンラインで学んだ知識や考え方をより具体的・実践的に深めることができました。さらに、事前のオンライン学習でグループワークを行っていた学生同士が、現地で実際に顔を合わせて活動する機会もあり、オンラインと対面を組み合わせた学びと国際交流を実現しました。

また、広島大学と一つの受入大学との交流にとどまらず、北京師範大学、韓国外国語大学、インドネシア教育大学、カセサート大学など、複数の大学から学生が参加することで、二国間にとどまらない多国間の国際交流が実現しました。異なる国や文化的背景を持つ学生がともに学び、意見を交わす中で、さまざまな価値観や考え方に触れ、異なる視点を理解し、互いに尊重する姿勢を育む機会となりました。

さらに、過去のCampus Asiaプログラム参加者が学生スタッフとして運営をサポートするなど、プログラムの参加者が次のプログラムを支える側へとステップアップする循環も生まれています。参加するだけでなく、後輩学生の学びや交流を支える立場を経験することで、国際交流に主体的に関わる意識の醸成にもつながりました。

このように、オンラインでの事前学習、渡航先での体験学習、多国間の学生交流、そして学生スタッフとしての運営参加を組み合わせることで、学習と国際交流を有機的につなげることができました。こうした継続的な学びと交流を通じて、学生の異文化理解を深めるだけでなく、異なる価値観を尊重し、多様性を受け入れるインクルーシブ・マインドの醸成につながりました。

プログラムスケジュール